しまなみサイクリング入門(16) 尾道~今治間を日帰りで往復する

 徐々に経験を積んできて、「しまなみは目をつぶってでも走れる」とか天狗になってきた素人サイクリストの「window tribe」です。あっちこっち武者修行して琵琶湖では1日の走行距離がやっとのことで100㎞の大台にのりました。

 天狗というのは気が大きくなって「身の程知らず」みたいな意味合いもあったりしますので、今回は温めていたプランをついに実行に移すことにしました。

 尾道駅~今治駅間は片道75kmと言われていますが、今治側は四国本土にタッチしたらOKとして70km、それを日帰りで往復して140kmを走ろうというプランです。

 今までは主に折畳み自転車でサイクリングしていましたが、この計画のためにドロップハンドル車を用意しました。タイヤサイズは持ち歩く事も多いので小径車としましたが、ラレーRSC RSW カールトンといってコンポーネントはチェーンホイール以外はハブに至るまでシマノの「105」フル装備となっていて、11×2段変速で私のようなちんたらと走る者には十分なスペックの自転車です。自宅近くで慣れるために数回走って、一昨年にあたる2017年の6月17日土曜日に計画を決行しました。

尾道を出発する

 日の出前に車に自転車を積んで家を出て、尾道の有料駐車場で自転車を下ろします。スタートの尾道駅前で、時計は6時半を指しています。 

 駅前の渡船に乗り込みますが、何やら翌日自転車のイベントがあるらしく、その下見なのか体格の良い女性の方々が多く乗船していました。この方々に混じって走るのかと思っていたら、身の程知らずの杞憂で向島で下船後にあっという間に視界から消えてしまいましたのでマイペースで走る事ができます。

 まずは道案内のブルーラインが今治まで75kmを指しています。そしてこの時点で太陽の低い6時40分なので私の影は長く映し出されています。

 向島は勾配の少ない走りやすい島で、最初の因島大橋の下で丁度7時です。まるでハワイのような「立花食堂」は当然開店していないので先を急ぎ因島大橋の渡り口まで上って、二階建ての橋の下側の自転車道に着いたのが7時10分です。

 いつもはスナップ用の小さいカメラと、望遠用のちょっと大き目のカメラの2台を持ち歩くのですが、何にでもレンズを向けていると時間をロスするので、機能的には平凡なSONYのちっこい防水カメラTX10だけにして、撮りたい欲求を抑える事にしました。

 


 早速横道ですが、こうして原稿が書けているのも要所で撮影した写真のプロパティの中に撮影時の設定データの他に時刻も表示されているお陰です。

 カメラの機種によってはGPSが搭載されてログをとる事も出来ます。そのログをパソコンで開いてみますと、グリニッジ標準時間・緯度・経度が設定された時間間隔でびっちりと記録されています。グーグルアースに落とし込んでみますと移動速度のムラなども見ることが出来ます。

 このように記録を取る事も、サイクリング後の楽しみに役立ちます。

 


 さて、コースに戻り、脇目も振らず写真も取らずに因島は一気に横断して、生口橋入り口には7時50分到着です。

 3つ目の島の生口島も平坦なルートで走りやすい島で、ドロップハンドルの下側を握ったりして、不慣れな自転車の感触を確かめる余裕がありました。

 今までの経験でサイクリングが楽しいのはせいぜい「最初の30kmくらい」までで、丁度その辺りです。


行程の1/4を消化

 瀬戸田の町並みを過ぎて生口島西岸に出て、8時半過ぎにサンセットビーチで一休みします。

 本日のコースの中間地点にあたる多々羅大橋では今治まで39kmのブルーラインを見て、愛媛県との県境を9時丁度に跨ぎ愛媛県の大三島に入ります。これでこの日の行程の1/4を走った事になります。

 6時半スタートでここ迄2時間半となり、今治の折り返しがもう2時間半で12時、帰りは5時間で・・・という皮算用通りにはいかないのは理解しています。サイクリングで楽しい「最初の30km」を過ぎたので、この先3/4は修行の旅となります。

 多々羅大橋を降りた所には「サイクリストの聖地」の碑があり、ここには人型自転車スタンドの「6人のシクロツーリスト」のうち4体があり時間が無いと思いながらも記念撮影します。

 大三島は平坦な道を快走して、次の伯方島との間に架かるアーチ橋の大三島橋に上がるのはちょっと息が切れます。この時点で9時半です。

 伯方島インターチェンジ辺りでは渋滞が起きており、車道は事故で通行止めのようですが、自転車は問題なく進めます。道の駅伯方S・Cパークでは塩ソフトクリームで一休みし、10時前に走り出します。

 伯方・大島大橋に上がりますとトラックと軽自動車の正面衝突の事故現場のようで検証していました。

 そして最後の島に当たる大島に降り立ちますが、いくら大好きになったとは言え、走るのには難関なのは変わりありません。しばらくはシーサイドを快走して、村上海賊の本拠地「能島」もこの時には波穏やかでした。

 鵜島に渡るフェリーが宮窪港に入っていましたが、車4台位しか積めない小さなフェリーでちょっと珍しかったです。

 宮窪から山間部に入り込んで行きますが、しばらく登った大島北インターでも本州方面には通行止めで大渋滞となっており、以降大島の山間部をどこまで行っても見渡す限り渋滞の列でした。

 高速道路の高架の下の日陰で一休みしながら大島の山間部を縦貫して大島南インターを過ぎると下り坂となり、その先には来島海峡大橋の姿が見えてきます。海辺に出て道の駅があるのですがパスして、すぐさま来島海峡大橋のアクセス道を登ります。

 途中視界が開ける所があるのですが、橋をくぐろうとするタンカーが見えるます。今日は写真は撮らないと言いつつもTX10のデジタルズーム一杯で追ってみますが、多くの遊漁船をかき分けながら航行していて事故が起きないのか、素人ながら心配になります。

 エメラルド色の海辺や自転車道の大きなループを眺め、橋の上に上がったのが11時半前後で、この先4kmの長大な橋をひた走り四国本土に向かいます。途中下を見るとやはり遊漁船をかきわけながら航行する貨物船が見えます。


四国本土に足跡を残し折り返す

 来島海峡大橋を渡りきり、今治造船の工場が見えて四国本土に足跡を残した事にして、自転車の向きを180度回転して尾道方向を目指します。朝6時半に尾道を出発して11時45分ですので所要5時間15分で折り返しとなります。

 今、来たばかりの道をすたこらと引き返し、片道でさえ嫌いだった大島の縦断を往復で行います。

 途中から往路より短くはなっていましたが、大島北インターに向かっての渋滞がまだ続いていました。

 愛媛県のマスコット「みきゃん」とその敵役の「ダークみきゃん」に安全走行するように励まされつつ無心で走って、大島縦断を終え宮窪側の海が見えて来ました。

 時間は13時半くらいで、伯方・大島大橋の手前にあるお好み焼き店「こんぴら」でお昼休みとします。

 窓の外には伯方・大島大橋とその橋脚部にあたる無人島の見近島が見えます。この島は次回以降の舞台となる重要な島となります。

 5時前に家を出たので、お好みが焼けている間にうつらうつらとしてしまいますが、丁度良い中休みとなりました。支払い時にご主人が春日井の伯方の塩飴を下さいましたが、これがことのほか美味しく励みになりました。

 14時過ぎに「こんぴら」を出て、そそくさと伯方島を通り過ぎ、大三島橋にさしかかります。この地点でブルーライン上で尾道まで45kmと表示されています。

 大三島に戻ってきて次の多々羅大橋の姿が見えてきますが、15時前で、そろそろお土産も買っておかないといけませんので、大三島で柑橘農家さんが営んでいる「リモーネ」に立ち寄り、あれこれ悩んだ結果、嵩張らないジャムを購入します。


行程の3/4走り、クタクタになる

 大三島に別れを告げて多々良大橋に差し掛かり15時半過ぎに県境を跨ぎ広島県に戻って来ました。これで全工程の3/4走った事になります。

 生口島の北側を半周して次の生口橋には16時半くらいにさしかかります。因島ではくたくたで写真を撮る元気も無く走りますが、尾道まであと16kmと表示されゴールを意識します。

 最後の橋となる因島大橋への登りが素人には一番心臓破りで、なんでこうまでして走っているのか自問自答してしまいますが、これを越えたらもう辛い坂道はありません。17時半過ぎになり、最後の島の向島に降り立ち、朝に見た爽やかな因島大橋が帰りに見ると逆光で辺りが暗くなって来ているのが分かります。

 ここまで来ればもう帰ってきたのと同じだと老体に鞭を入れて、前を走っていたカップルを抜き去りますが、息が切れた所であっさり抜き返されどんどん遠ざかっていきます。ゴールを意識した事で逆に足に鉛の錘を付けたようにペースが上がりません。

 やっとの事で渡船乗り場に辿り着き、18時10分に尾道駅前に戻って来ました。6時半に出発したので何とか12時間かからず戻って来れました。

 その足で、速攻で向かったのは行きつけの蕎麦屋さんですが、無常にも研修に出て臨時休業。捨てる神有れば拾う神ありで、尾道一番店の朱華園が開いていたので中華そばを食べて、自転車を車に積み込んで帰途に就きます。

 疲労困憊といえばその通りなのですが、帰って一風呂浴びた辺りから震えがきだして、そのまま寝込んでしまいましたので、老体には相当無理があったようです。

 


後日談

 この140kmを走ったのは一昨年の事ですが、実はその間に新たな「しまなみ海道の楽しみ方」を見つけて、サイクリングは少々さぼり気味でした。

 ところが今年のゴールデンウイークということは、あれから2歳ほど馬齢を重ねた事になりますが、還暦前に年甲斐もなく2度目の日帰り往復140㎞に挑戦しました。走り方・休み方をちょっとは考えるようになったおかげか、帰ってきて筋肉痛はありましたが震えが来る様なことはありませんでした。しかし今後は大事になる前にちょっと自重はしないといけないかなと思いました。


 また行きつけの蕎麦屋「笑空」さんは今年の2月で開店10年の節目でお勉強に行くということでミシュランの星を持ったまま長期休業になりました。

 そのうえ今月、全国の麺食いの間を駆け巡った衝撃ニュースは、「朱華園」が、ご主人の体調不良で松永店は閉店、本店は長期休業とのことです。

 お蕎麦屋さんの方はそこそこ通っていたので事前にこっそり聞いてはいたのですが、「朱華園」は本当に寝耳に水でした。尾道の観光、ひいては経済の一翼を担ってきたので、一中華そば店にも関わらず日本経済新聞でまで報じられていました。

 双方とも尾道に行く目的として高い評価を持ったまま、周囲が突然の事に驚かれる中で、潔い決断をされました。

 わたしも落ちぶれないように老いて益々向上心を保てるようにしないといけないと感じた次第です。


 さて、ここまで書いてきた「しまなみ海道サイクリング」は、ひたすら通り過ぎる事に主眼を置いてきました。読む側からすると橋と自転車の写真ばかりのマンネリで興味の無い方には面白くない事は想像できます。

 そこで次回からは趣向を変えて「移動」から「居つく」しまなみ海道について書いていきます。

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