しまなみサイクリング入門(17)卑怯にも原動機付き「自転車」で行く

 しまなみ海道サイクリングに再三通っても、素人サイクリストの域から出られない「window tribe」です。前回までで、一応日帰りで尾道~今治間の往復140kmを走破して一定の達成感を得たところまで来ました。

 このあとの目標を琵琶湖を1日で1周はさすがにキツイし、淡路島1周も坂がキツいらしいし、広島港から松山にフェリーで渡って、しまなみ海道で帰る周回プランなども考えましたが、あくせくと「通り過ぎる事」だけを考えている自分に気が付きました。

 そこで、のんびりした「しまなみライフ」を模索するために、以前から気にはなっていたのですが、伯方島と大島の間に架かる伯方大島大橋の橋脚の土台になっている「見近島(みちかじま)」という無人島に着目してみました。

 橋の上から下に降りる道があり、自転車と原付バイクでしかアクセスできない野営場にキャンパーが集っているそうです。最近、広島のローカル番組ではお笑いのバイキングの「じゃない方」のやっている「西村キャンプ場」という番組でも取り上げられ、注目されています。


卑怯にも原付バイクで旅立つ

 自転車で日帰り往復して、自分の中ではひと区切りついたので、新たなしまなみ海道の道楽の仕方を探しに一回ほど見近島の様子でも見に行ってくるかと昨年の8月に偵察に出かけました。

 この時使ったのが、我が家で下駄代わりに使っている、いつのものやら分からなくなった古い90CCのスクーター「YAMAHA アクシス」です。俗に言う「第二種原動機つき自転車」です。

 あれだけ、自転車での1日の走行距離を延ばす事に血眼になっていたにもかかわらず、手のひらを返したように、卑怯にも機械の力を頼ってしまいました。

 とはいえ「年も年だし」と罪悪感を感じるわけでもなく、私の住んでいる東広島市から国道432号線で竹原市まで行きます。朝の爽やかなうちに町並み保存地区を流しますが、最近はJALのCMで嵐がこの辺りを宣伝してくれています。

JAL先得「幸せのハート」篇 30秒

 そこから海沿いの国道185号線を東にしばらく走ると忠海港となります。ここから7時30分発の大三島の盛港行きの始発フェリーに乗りますが、忠海港は「うさぎの島」として知られる大久野島の入り口でもあり、2便以降のフェリーは大久野島にも寄港します。
 盛港までは大人360円と原付が260円の620円となり、突堤のカモメ達に見送られながら大三島を目指します。


しまなみ海道に、途中入場

 多々羅大橋の姿が見えてくると大三島の北端に近い盛港に近づきます。いつも尾道から自転車で走って行っている事を思うと、乗船時間25分で8時前に大三島到着ですのでウソのように早いです。

 

 ここから「原動機の付いた自転車」にまたがり、平坦な大三島東岸を南下し、多々羅大橋の所から、しまなみ海道の推奨ルートに入ります。自転車の倍以上のスピードで大三島を突っ切り大三島橋を渡ります。

 途中の斜面では先の西日本豪雨の爪痕が残っていて、木の根っこまでごっそりと持っていかれる水の力の強さを再認識できます。

 いつもの「自転車」は無料で渡れるのですが、「原動機の付いた自転車」は多々羅大橋が100円、来島海峡大橋が200円、その他の橋は50円の料金がかかり、無人料金箱に支払います。


無人島の見近島に降り立つ

 伯方島も一気に突っ切り、8時半に伯方大島大橋に差し掛かります。橋上から見近島の野営地を見下ろしますが、この時間帯ではまばらにテントが見えて結構空いているようです。

 橋脚手前に「見近島」という小さな看板があり、ここから坂道を下った所に野営地があります。 まだ数張りテントがありますが、撤収中の方と言葉を交わしてみますと、京都からバイクで来られたそうです。

 海沿いには、藤棚と石の腰掛が設けられ、寛ぐのに都合が良いようです。いつも橋の上を通り過ぎる時に見ていたら、ここを中心にテントが張られているようですが、上から見たら分かりませんが山寄りの木々の近くにテントを張る方もおり、居心地のいい場所をその時の空き具合でチョイスしているようです。

 流しやトイレもありますので、キャンプするには申し分なく、今治市から委託された方が管理しているようですが、予約や料金も発生していません。

 目の前は海で海水浴も出来るみたいで、シャワーは無いですが流しの所にホースがありこれで洗えるようです。

 一応は下見完了で、次は是非泊まってみたいと思う環境です。


カレイ山でカレーを食べる

 さて、今回、しまなみ海道にやって来たのはもう一つ目的があって、見近島の対岸の大島に標高232mの「カレイ山」という所があって、そこに上がるためにも「原動機の付いた自転車」が必要でした。

 伯方大島大橋を下りて、毎度の事ながら村上水軍の拠点「能島」を眺めながら宮窪瀬戸沿いを進み、大島の山間ルート入り口を少し行った十字路を右の折れるとひたすら登り坂を走り、大島名産の石切り場を眺めながら頂上を目指します。山頂は公園化していてキャンプ場や展望台もあります。

 展望台脇に地元のNPOが運営している「遠見茶屋」という週末だけ営業のカフェがあります。ここの名物が銀座の有名料理人監修で鯛で出汁(お洒落に言うとフュメ・ド・ポワソン)をとったという限定25食の本格カレーです。

 ただし11時半からの提供ですので、それまでは風を感じる事の出来るオープンデッキに陣取りソフトドリンクでゆっくりします。

 本棚には和田竜の「村上海賊の娘」が当然のようにあります。下巻の途中まで読んでいたので、その舞台の能島を眼下に見下ろし、贅沢な読書が出来ます。 一旦中座して展望台に上がってみたりしますが、悪い癖でつい動くものにシャッターを切ってしまいます。
 「空が近い」ということが実感できて、翼端形状からしてANAのB787が飛行機雲を引いている様や、DHC8-Q400も見えたり、沖合いの燧灘(ひうちなだ)では船がタイトなすれ違いをしているのも見えて、退屈しません。 さて、時間になったので遠見茶屋に戻ってカレイ山でカレーを食べることにします。ドリンク・サラダとセットで1100円ですが、ドリンクは先ほど先行して頂きました。
 トッピングはタコや野菜の素揚げが添えられていますが、茄子が苦手な私は代わりにカボチャ多めに盛ってもらいました。さらりとして爽やかな辛さです。あくせくと通り過ぎるしまなみ海道ばかりでしたが、のんびりするのも悪くないと考えるようになりました。


新ルートで帰る

 とはいえ、そろそろ移動で、さっと大三島まで戻ります。多々羅大橋が見えるのですがそっちに向かわず、いつも土産物を買っている「リモーネ」で、看板猫に挨拶してママレードを買いました。 帰途はフェリーを乗り継いで往路とは別のルートで帰ろうと考え、目立つ大きな施設のない大三島南岸をひた走ります。

 南には大島とその先の来島海峡大橋が見えます。ということはその向こうが今治市街ということになります。背後にうっすらと見える山容が西日本で一番高い石鎚山です。

 大三島の南岸を西に走りきった辺りに旧宗方小学校を使った宿泊施設「大三島憩いの家」があります。ほとんど小学校のまんまの建物とビーチも備わっています。

 長い廊下に下駄箱や教室の引き戸などノスタルジックな雰囲気を残し、校舎前には木村佳乃主演で昨年亡くなった大杉漣などが脇を固めた映画「船を降りたら彼女の島」の碑があります。

 また同じ敷地内には円形の建物の「岩田健母と子のミュージアム」で彫刻が展示されています。 この先に進むと宗方港となり、ここから1日3便と少ないのですが、広島県の大崎上島の木江に向かうフェリーがあります。大人料金260円に原付が490円とちょっと割高ですが、併せて750円です。

 出港して大三島を振り返りますと、多角形な面を用いた伊東豊雄建築ミュージアムの「スチールハット」や、斜面に建てられ、館内が階段状に展示されている「ところミュージアム」が見えます。

 海の方に目を転じますと、航行しているコンテナ船がやってくるのですが、正面から見ると重心が高そうで、横から見るとコンテナがびっちり積まれているのが分かります。また船首の出っ張りはバルバスバウというのですが、波を切る様子も観察できて15分のクルーズは有意義でした。


広島県に戻ってきた

 広島県に戻ってきて、大崎上島の木江(きのえ)に上陸します。辺り一帯は木江港ですが、フェリー桟橋だけは天満港と称しており、ちょっとややこしいです。

 高度成長期以前は潮待ちの港や造船業で栄えていて、旅館や遊郭なども多かったそうです。今ではすっかり寂れていますが、妙に保護事業など無くそのまま徐々に衰退している分、人の営みの中で新旧取り混ぜた往時の様子を垣間見る場所も残っているようで、今度腰を据えて来る価値がありそうです。

 ここで目立つのが木造五階建ての建物です。昔、栄えていた頃は造船所の接待クラブとして使われていたそうです。正面から見ると4階建てに見えますが、海上から撮っていた写真では奥まった所に5階部分を見ることができます。どうやら4階建では縁起が悪いそうで、5階建てに変更したそうです。
 大崎上島は以前、電気自動車で走り回った事があります。


未来先取り、モビリティで大崎上島を巡る。2018年4月16日


 今回は帰りを急ぐと言いながらも、その時に走っていなかった島の東側を半周して、大西港から東広島市の安芸津に戻ります。

 大崎上島には広島商船高等専門学校があり、実習船の「ひろしま丸」が停泊していました。

 大西港を出る前から見えているのですが、橋で繋がった長島という島には大崎火力発電所の煙突が高くそびえ立っています。この高さは200m程あり、対岸からも見える大崎上島のランドマークといえます。

 大西~安芸津のフェリーは1日16便あり、朝夕は密なダイヤで、日中はちょっとまばらですが、両港を35分で結びます。料金は大人380円に原付が270円で650円となります。

 徐々に安芸津港が近づくと、水面には牡蠣いかだと、陸地には赤土の畑が見えてきます。名産の赤じゃがいもの畑です。

 安芸津港に上陸しますと、目の前の国道185号をちょっと東に行きます。呉線の線路と国道の間に先ほどの赤じゃがいもの販売所が有り、名物の赤じゃがコロッケを頬張って、ここまで戻ってきてほっとします。

 安芸津は酒造家として広島の水質に合った「軟水醸造法」を広め「吟醸酒の父」といわれる三浦仙三郎ゆかりの地です。

 上側の写真は「富久長」の銘柄で女性杜氏で有名な今田酒造さんで、ここのお酒は機会が有れば結構いただいています。

 また下側の写真は「関西一」の銘柄の柄(つか)酒造さんです。昨年、東広島では賑わった川栄李奈主演で、大杉漣さんの遺作となった映画「恋のしずく」のメイン舞台として漣さんが蔵元役としてロケの行われた場所です。

 ただ、川沿いに立地していて撮影後に豪雨災害で大きな被害を被りましたが、監督をはじめ映画関係者も復旧に駆け付けていたと報じられていました。

 ここからひと山越えると新幹線の東広島駅になるのですが、途中、急峻な所ですのでやはり道路が流れているなど豪雨の爪痕が随所に残っていました。

 印象的だったのが最近増えている太陽光発電の大規模な施設で、濁流の跡はパネルがクチャクチャになっており、自然の猛威を感じる事ができました。


 自転車から原付に乗り換え、機械の力に頼って「卑怯」とか思いながらも、道中、多くの見聞ができてそれはそれで勉強になり、そこが旅の止められない理由です。

 東広島の西条迄戻って帰り道、久々にバイクでそこそこの距離を走ったので、行きつけのバイク屋さんで甘かったブレーキ周りの油圧調整をしてもらいました。

 下駄替わりで振り向くことが少なかったこの原付バイクが、「通り過ぎる」から「居つく」しまなみ海道へと、「見近島」通いに楽しみ方を転換するため、引き続き大活躍することになります。

 しかし自転車を差し置いては、サイクリングとは言えなくなりますので看板を掛け替えないといけません。

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