水面(みなも)と戯れる カメラ道楽部屋(7)

 当分、自転車の事を書いてきたので、そろそろカメラの話に戻ってきた「window tribe」です。

 さて、私の好きな季節は、桜の時期が過ぎて梅雨との間の時期で、新緑と青空のコントラストが鮮やかな初夏といわれる季節です。

 私が勤務している弊社の東広島工場入り口にお迎えしている大日如来のまわりでもアヤメやスズランが咲き、松も新芽が伸びてきてその先に雌花(翌年に松かさになっていきます)がついています。また街路樹に交じっているソメイヨシノには小さなサクランボ(酸っぱ苦いそうで食べない方が身のためです)が実っていました。  私の住んでいる所と勤めている所は世間で言う「田舎」の部類で、工場近隣の小学生は朝7時になる前から集団登校しています。

 その道中の棚田に水が引かれ、徐々に田植えが進んで、水面すいめんと読まずみなもと読んでください)には上下対称の風景が映し出されています。

 また山陽本線まで降りますと線路脇の田にも水が引かれ、鉄道写真家のまね事で、水面に映った電車を狙ったりもします。 こんな書き出しで何のカメラの話かと思われますが、散々カメラのハード面について書いて来ましたので、当分は被写体のテーマを決めて撮り貯めていた写真の中からあれこれと紹介していこうと思います。

 そんなことで今回は田んぼに水が張られたのをヒントにして、「水面に映った風景に誘われ、思わずレンズを向けた」というテーマでチョイスしてみました。


広島県を撮ってみた

 私の住んでいる所からスタートしましたので、まずは近隣で時間を見つけては散策している広島大学から紹介してみます。

 東広島キャンパスの中央部に「ぶどう池」という、大学が統合移転をする前にブドウ畑用に使われていた溜め池があります。お世辞にも水が綺麗とはいえませんが、ここでトンボの写真を撮ったりしていました。

 そんなぶどう池は夜の帳(とばり)が降りてきますと、水面には徐々に空の青から濃紺へのクールなグラデーションが映し出されていきます。


 また、工場から車で東に15分くらいの所に広島空港があるのですが、隣接する中央森林公園に広島県の代表的な名勝である、宮島、縮景園、三段峡の特徴を模した「三景園」という庭園があります。ここの池には木々の彩が水面に色濃く映し出されています。 


 広島市内に歩を進め三景園のモデルで、広島藩主の別邸だった「縮景園」では、中心にひろがる濯纓池(たくえいち)に架かる跨虹橋(ここうきょう)が広島では知らない者がいない絶好の被写体となります。


 安芸の宮島では、始発のフェリーを待つ間に島影から太陽が昇ってくる様が見られました。

 大鳥居はサラリーマンの私が時間をみつけて観光で行ったくらいでは鏡に映ったような表情を見せてくれません。絶好のシャッターチャンスを待ち続けることが出来るプロの写真家とサラリーマンとの、写真に対する思いの違いでもあります。


 広島平和記念公園は原爆死没者慰霊碑が被写体となります。上のほうの写真は8月6日の様子ですが、この日ばかりは普段と異なり、世界中からの注目が集まって広場が人で埋め尽くされます。 元安川をはさんで対岸の原爆ドームでは、上側と左下の写真は鏡のように水面にくっきりと映った原爆ドームを撮ることができましたが、ここまで水面が乱れない幸運を素直に喜びたいです。
 右下の写真は原爆ドームとギターを抱えて青春する若者の構図ですが、写真の見方によって様々なストーリーを想像する事ができると思います。


 尾道港では以前、対岸の向島の造船所のクレーンを色とりどりに照らしていましたが、最近も週末にライトアップされているようです。


旅先でカメラを向けてみよう。

 時代は令和になりましたので、まずは皇居から。実はこの橋を「二重橋」というのだと思っていました。ところがWiki先生で調べているとこの橋は「正門石橋」と言うそうで、見え辛いのですが、この奥にある鉄製の正式名「正門鉄橋」の事を指す通称を「二重橋」と言うそうです。また石橋・鉄橋併せた総称としても「二重橋」の呼び名が用いられているそうです。

 そして同様の構図の撮れる場所で有名なのは長崎眼鏡橋です。


 水面に映ってもらいたいものの筆頭は「逆さ富士」といわれる富士山ではないでしょうか。ところが私はこれについては全く運に見放されています。

 箱根に旅行に行った折に芦ノ湖では、せっかくの空の青さに対して朝もやが低く絡みつき、やっと見えた富士山の山頂も雪が無いので真っ黒で絵になりませんでした。


 日々お世話になっている千円札に描かれているのが、本栖湖での逆さ富士なのですが、親孝行で富士山を見に行った時も天気がすぐれませんでした。千円札の風景のポイントに行っても雲が立ち込め右側の風景でどうにか、この場所ということが分かる程度で、何をしに行ったのか分かりませんでした。 このとき泊まったのが日本平ホテルというキムタク版「華麗なる一族」の万俵家の庭園ロケ地に使われたホテルなのですが、新装になった建物の水盤に映った光景が、これほど上下対称に撮れた事で富士山のアンラッキーさを幾分かは払拭できました。


 先ほどの千円札と一緒に一万円札と十円玉を写していたのですが、この二つに関係があるのが京都の南側、宇治平等院です。

 極楽浄土をこの世に現したような国宝の「鳳凰堂」の正面から見た構図が十円玉の表面に描かれています。また鳳凰堂の所以たる屋根の上に立つ鳳凰は一万円札の裏面に描かれています。(本物は鳳翔館というミュージアムに展示され、屋根の上にあるのはレプリカです)

 鳳凰堂は間近に見ると池の水の色が緑がかっているのですが、快心の青空が写った時には極楽に来たように嬉しくなります。


 そして最後に令和になった事にちなみ、伊勢神宮内宮、五十鈴川の水面で締めくくります。ここは写真で見るより行ってみないと分からない厳かな気分になれる場所です。


 今回紹介した写真は、ほんの一部は一眼レフで撮っていますが、多くの写真は出先で普通のデジカメで撮ったものです。道具の良し悪しより、被写体の前の、その場、その時に居て、レンズを向ける事が重要と考えています。

 そういった意味ではスマホの普及と高性能化で写真撮影の垣根がグンと下がっていますが、今一度、構図を考えながら撮る修行を積み重ねていこうと思います。

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