組版よもやま話(その2)、ポスター用の写真を撮ってみよう。

 窓際の観葉植物の水やりが日課の「window tribe」です。今回のブログは、お仕事目線での私の考えを述べてみます。

 「組版よもやま話」と題していながら、組版とずれた事を書いているようで申し訳ないのですが、今回は「広島」を象徴する代表的スポットの平和記念公園・原爆ドーム界隈に行った事にして話を進めて行きましょう。

 

「原爆死没者慰霊碑」前で撮影してみる。

 普通の人が普通にカメラを手にして写真を撮ると大抵は「横位置」でカメラを構えて「対象物を真ん中に撮る」のではないでしょうか。観光客としては、それはそれで世界的に有名な場所での記念になり至極当たり前な事です。 それでは私の場合はどうかと申しますと、一応は「印刷業」に携わる人間として一般の方々とは違った事を意図的に考えながら撮影しますので、その辺りをとりとめもなく述べてみます。

 ただし誤解のないように申上げておきますが、私はプロのカメラマンやコンテスト常連のハイアマチュアではなく、どちらかというと皆さんに近い属性だと自認しています。職場内では組版上級者がDTPの意味不明の横文字やカタカナ言葉の用語を使ってやり取りしている横で首を傾げている日々を送っています。それゆえに敷居が低く「こんな考え方もあるよ」程度で聞いてください。

 一つ目として行っているのは、先ほど「横位置」で撮るケースが多いと述べましたが、ポスター、チラシ、表紙などに全面で写真を入れようと考えると縦型の印刷物が多数派ではないでしょうか。それならば写真の方も「縦位置」で撮る方がベターであると言えます。

 ただしガラ携愛用の私もなのですが、昨今のスマホなどの携帯デバイスは自然と縦位置になり、SNSとやらでも縦位置が主流なのでしょうか。

 お次に二つ目として、昔のフィルムカメラと違って、最近のデジタルカメラはメディアの大容量化もあってガンガン撮り放題ですので、一枚だけとは言わずに違ったアングルで余分に撮影をします。「捨て駒を撮る」という感覚でしょうか。

 ここでは「原爆死没者慰霊碑」を対象物として撮ってみましたが、写真全面を印刷原稿として使うには文字と背景が干渉して非常に読みにくいものになることが予想されます。

 それならばと考えて、三つ目に行うのが、ぐっと後ろに引いて、たまたま好天なのを生かして、対象物を下に追いやって、思い切り空を広く撮ってみました。
 これならば背景が整理されて、見出しを大きく入れて、記事も読みやすく入れることが出来ます。

 たまたまこの場所では足元もよく整備された石畳ですので、対象物を中央に撮っても見出しを上に配して、下側に記事を入れる方法も使えます。

 この場合、空に比べて足元は暗い色合いです。DTP上級者の方々が使っている言葉を受け売りで書くと「減調」と言うそうですが、指定した範囲の色を薄くして書き上げ文字を配したり、その逆に「乗算」といって指定した範囲に別の色を半透明に被せて一層濃くして白抜き文字で表現するなどの方法を用いる事ができます。

 ここで整理。①縦位置でも撮ってみる。②ケチケチせずにアングルを変えて余分に撮ってみる。③文字を入れるスペースを確保するため空など背景がシンプルな部分を広めに撮る。

 また文字を入れるときは、背景が淡い色の時は書き上げ文字、濃い色の時は白抜き文字が読みやすく一般的。

「原爆ドーム」の周りで考える。

 場所を移して世界遺産「原爆ドーム」の方に行ってみましょう。平和記念公園と一体で捉えられそうな原爆ドームですが、元安川を隔てた別の施設となります。

 写真撮影のセオリーで太陽を背にした順光で撮ると空の青、木々の緑と併せて、爽やかで今の平和な時代を象徴する佇まいです。

 しかしセオリーに逆らって太陽に向かって逆光で撮影してみましょう。ここでは思い切りコントラストを上げてみましたが、むき出しのドームの鉄骨が、「平和を享受するためには多くの犠牲の上に何が起きたのか学ぶ事を決して忘れないように」と主張しているようにも見えます。
 白と黒にくっきりと分かれた背景は、先ほどのような小細工無しで文字が語りかけてくれる印刷物を作る事ができます。
 そして夜、暗闇の中で川面に上下対象に映った原爆ドームは、見る人にとって様々な「考える」事を投げかけて来ると思います。

 今回は平和公園・原爆ドームを題材にしましたが、印刷は「思いを伝える」手段です。一般の方では人生の中で印刷物を発注される回数は数える程しかないと思いますが、もしそんな機会が有りましたら、より思いの通じる作品になりますように一呼吸入れて、「受け手・読者」の立場で考えて、もう一歩踏み出して頂けますとより良い印刷物が得られるでしょう。

 

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