AmazonとGoogle、異なる電子書籍ビジネスの手法

AmazonとGoogle、この2社の共通点は何でしょうか。どちらも米国を本拠地とする大企業、確かにそうですが、正解は2社とも電子書籍のビジネスに参入していることです。しかし、この2社の電子書籍の販売へのアプローチは全く異なっています。

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1.Amazonの場合

まず、以前からオンラインで電子書籍が買えるということで話題になっていたAmazonの携帯端末から。
予約は10月7日から開始されたようですが、10月19日から日本のAmazonでも無線通信対応のブックリーダーの端末「キンドル」の販売が始まりました。日本を含む100か国で同時に発売されます。

発売当日、日本での値段がいくらなのか気になってAmazonのサイトをのぞいてみましたが、キンドルの商品説明のリンクはまだ発売前と同じく米国のAmazon.comにつながる状態でした。どうやら販売は米国Amazon.comを通じてのみとなるようです。まだダウンロードできる書籍が英語のものに限られるということで、こういう販売の仕方にしたのかも知れません。日本で本格的に売り出すには、端末が日本語のコンテンツに対応し、日本語の書籍が出てきてからということなのでしょう。

ちなみに米ドルでの値段は$279。現在の為替レート(1$=約90.5円)で約25,250円になります。Amazon国内での買い物は通常3,000円以上の買い物で送料が無料になるはずですが、これもその対象になるのかどうか、英語のサイトを見ただけではよく分かりませんでした。

米国内では$259で同型の端末(無線通信が米国内専用らしい)と、もう一つ大画面でPDF形式の書籍にも対応したデラックス版があってこれは$489だそうです。米国外でのこのデラックス版の発売は来年の予定のようです。
気になる日本語版の発売ですが、残念ながらまだ未定だそうです。現状では端末は欧文のみの対応となっており、日本特有の(中国もそうですが)漢字に対応するのが技術的にまだ困難なのだとか。

いずれにしても、近い将来世界100か国で、端末がそれぞれの国の言語に対応し、それぞれの言語の本が買えるようになると、既存の出版業界は非常に大きな影響を受けることになるでしょう。

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2.Googleの場合

一方、最近、本の著作権をめぐる訴訟で物議をかもしているGoogleはこれとは対照的な本の販売の手法を考えているようです。すなわち、「紙の本を、電子ブックリーダーが追いつかないところまで進化させる」という考え方です。

銀行のATM機で必要なお金を引き出せるように、自分が欲しい本をその場で印刷してもらう…。今までの常識からすると信じられないような話ですが、こんなことがすでに可能になっているのだそうです。

ニューヨークに本社を構えるオンデマンド・ブックス社は、印刷・製本機械「エスプレッソ」といういわば「インスタント製本機」を開発しました。このまるでコーヒーのようなネーミングがいかにもアメリカ人の発想らしいですね。

The Espresso Book Machine

見た目は超大型のオフィス用コピー機のよう。これが1分間に150ページをプリントアウトし、プリントアウト後に綴じて表紙をつけ、断裁し、たった4、5分で1冊の本を「吐き出す」というスピーディーさです。「本のためのATMマシーン」と呼ばれるのは、この簡単さゆえです。

エスプレッソはすでに、ハーバード大学のブックストア、ワシントンの世界銀行内、エジプトのアレキサンドリア図書館など、世界中の25カ所ほどで稼働中だそうです。エスプレッソが製本するのは、当初は主に著作権切れした約360万冊の書籍でした。

ところがオンデマンド・ブックスは最近、Googleとの提携を発表し、Googleがブック検索のためにデジタル・データ化してきた約200万冊をそのコレクションに加え本格的に出版界に乗り込んできたのです。

Googleはブック検索プロジェクトで著作権切れや絶版の書籍を次々とスキャンしてデジタル化しています。これだけでも現在出版中の書籍に及ぼす影響力は計り知れませんが、そこへ出現したエスプレッソは、出版界にとってはさらなる脅威となるでしょう。

オンデマンド・ブックス社では、「いくらデジタル化されても、やっぱり紙の本を手に取って読みたい人は多い」(同社CEOのデイン・ネラー)とにらんで、エスプレッソの開発に取り組んだそうです。クリックひとつで注文でき、すぐさまカラフルな表紙がついた1冊の本が手に入ります。デジタル戦略で遅れをとっている出版社と、早く本がほしいという消費者との間に割って入って、ビジネスを成り立たせようという計画です。

3.まとめ

このようにAmazonとGoogle、もっと端的に言えば「キンドル」と「エスプレッソ」は近未来の本のあり方を象徴する2方式だと言えるのではないでしょうか。

Amazonの携帯書籍端末キンドルは、2007年に米国内で発売を開始するまでに3年の開発期間を費やし、さらに発売してから今回の世界市場での発売に至るまで約2年かかったことになり、決して平坦な道のりとは言えなかったようです。
キンドルの開発のコンセプトは、携帯音楽プレーヤーとして成功したipodにならって、「本のipod」だったそうですが、そのipodの生みの親であるスティーブ・ジョブズ氏は「そもそも今は誰も本など読んでいないのだから、考え方そのものに無理がある。」とかなり手厳しい批評をしているとかいうことです。

一方のGoogleですが、最初からエスプレッソのようなビジネスが発生することを予測して本のデジタル化を進めてきたのか、定かではありませんが、確かに言えることは、本をデジタル化することによって、これまでになかったような様々な新しいビジネスが生まれてくる可能性があるということです。

例えば、実現はまだまだ先のことになるでしょうが、Googleには「Googleエディション」というクラウド書籍の構想があるそうです。これは、データを手元のデバイスにダウンロードするのではなく、データベースにアクセスして、そこで読むというものだそうです。Googleエディションでは、どこまで読んでいたかといったデータも記憶され、次にアクセスするとそのページをさっと開いてくれるといった親切な機能もつき、リンクもいろいろ貼られていて、カーソルを当てるだけでビデオが出てくるとか、そんなことも可能になると言われています。

この2つの方式のどちらが主流となり勝利をおさめるのか、これからも注目して行きたいところです。

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