尾道ラーメンブームを斜めから見る。 良いとこ尾道 第4回

 暑い夏も峠を越して、残暑の中にも涼しさの兆しが見えたのではないかと思っている「 window tribe 」です。
 9月になると行楽の秋の幕開けですので、堅苦しい「よもやま話」はちょっと休んで、しばらくは私が入りびたっている尾道の観光案内に本腰を入れようかと考えています。

「尾道ラーメン」と「中華そば」

 前々回、前回と、「富裕層」という大方の興味の湧きそうにないテーマで書きましたので今回は食べ物ネタでいってみようと思います。
 全国から尾道に観光客がやって来る目的の一つに「尾道ラーメン」というジャンルの存在がありますが、へそ曲がりのオジサンが斜めから眺めて、尾道の「麺」事情をあれこれ書いてみます。

「つたふじ」、「壱番館」など行列店はありますが、別格の老舗行列店が土堂の「朱華園」です。ここのご主人は私の自動車の趣味の大先輩にあたり、初めてクラブの先輩に連れて行かれてかれこれ35年以上経ちますが、それ以前からずっと「尾道の顔」として輝き続けています。

  尾道ラーメンと書き出しはしましたが、その定義は諸説あるようで、私ごときが語れるものではないのですが、その中でも背脂ミンチと並び煮干などの魚系の出汁が使われるという項目もあるようです。朱華園では鶏がらが基本で、スープを安定させるために少量の豚骨を使い魚系は入っていないそうで巷で喧伝されている尾道ラーメンの定義からは外れますし、朱華園自身も「尾道ラーメンじゃあないです」と言われていることを知っておいてもらいたいです。

 私の頭の中では前述の理由でブーム以前から通っている「歴史ある朱華園の中華そば」と、それ以降の「ブームに乗った他の尾道ラーメン」という線引きを勝手に描いていますが、言葉を扱う仕事をしている関係で、上辺だけの変なくくりを入れる「尾道ラーメン」という言葉はあまり好きではありません。

 朱華園の中華そばは、自家製麺による長方形断面の平べったい麺で独特の歯ざわりです。備後のラーメン・中華そばの特徴の背脂のミンチがスープに浮いています。昔、隣に座った女性客が「まあ、天かすが乗ってる」と嬉しそうに言われているので、お節介に正体を教えて差し上げましたが、この背脂のお陰で熱々が持続して冷めにくくもあるようです。
 スープは鶏がら主体の醤油味ですので長方形断面の麺と相まって日清のチキンラーメンと共通したテイストも有るのではないかと思いますが、他店と一線を画したシャープさを感じる事ができます。(ただし最近、混雑を避けて閉店間際に駆け込むとシャープさが丸まったように感じる事があったりします)

「尾道ラーメン」以降の構図

 そんな従来のブームに乗った十把一絡げの「尾道ラーメン」事情と方向性が異なる、近年新規に出店した若い世代の店主の「脱 背脂」の個性派のお店も紹介してみましょう。

 尾道では千光寺のロープウェー乗り場からちょっと海側に歩いた所にある朱華園を中心みたいに考えますと、もうちょっと海側に行った細い道を西に歩くと「オノミチ潮ラーメン でんやす」というお店が見えます。ここは入り口でチケットを買うシステムです。
 従来の定義のドングリの背比べ的な「尾道ラーメン」の中に割って入るには、一線を画す特徴が必要で、丁寧な仕事の魚介のみで仕上げた澄んだスープの「澄まし潮ラーメン」を頂いてみました。

 食べる前に、カウンターの箸立てが手前方向に前傾しています。目の前にやって来た大き目の丼も水平ではなく手前に前傾して、前のめりの心づもりで味わう事にいざなわれているようです。トッピングには控えめな焼豚に並んで鯛の皮を香ばしく揚げた「鯛皮せんべい」が自己主張しています。
 ここのメニューには仕上げ用に「〆茶漬け」があります。この時は試しませんでしたが、「汁かけご飯」とは違った上品なテイストが想像できますので次に試してみようと思います。


 尾道の市街を貫くアーケードを東に向かいアーケードが切れた辺りが歓楽街の「新開(しんがい)」となるのですが、その入り口辺りの「拉麺またたび」に自転車にまたがってやって来ました。

 カウンターだけのお店ですが、ひさし部分の朽ちたふうなトタン板が目印で直ぐ分かります。

 ここの特徴は低温調理のピンクがかった焼豚で、スープは鳥・豚・魚介使用です。私の舌が語れる程のものではないので表現はできないのですが、「尾道ラーメン」の行列に疲れた方々には新たな尾道の一面を垣間見る事ができます。

 香麺というトッピングたっぷりの汁なし麺も有名らしいですので、興味のある方は是非。


 「麺」というものは中国では私たちが思っている細長いものの他に、「小麦」製品を指す解釈もあるようですので拡大解釈してもう一つ注目店を。その名も「四一餃子」。営中の文字も「営中」にするこだわりの店です。

 以前は山陽本線側にボロッちくもぶっ飛んだ店構えでしたが、アーケード内に普通の店構えで移転されました。ここでは餃子を語る前に接客や洗い場をこなす「こども店長」の存在を抜きには語れません。「面倒くさそうに仕事をしている無愛想な大人たち、良く見ておきなさい、お客を迎えるサービスの原点をこども店長に教わるが良い」てな感じでしょうか。お店をお手伝いするその姿に出会えた時には、自らの職業観を考え直して、その日はハッピーになれます。

 その次に材料にこだわりの餃子がきます。普通の餃子や紫蘇餃子のほかにも、お好み焼き風の餃子もあります(ただし、普通にお好み焼きの方がベターかも)。そして例え自転車といえども運転のある方にはキンキンに冷えたグラスに「ノンアルコールビア」という心遣いが嬉しいです。


 これらの「尾道ラーメン」ブーム以降の新しい世代のお店は老舗に比べると至らない部分が有っても、若いがゆえに向上心・伸びしろがあり、これからが期待できるのが丁寧な仕事ぶりから窺うことができます。

市街地を離れると

 尾道も広域合併で因島や瀬戸田の方まで尾道市になってしまいましたが、向島の因島大橋の橋脚部分を少し過ぎたところにある「立花食堂」にご案内します。
 おおかたのラーメン店というのはカウンターなど狭い感じでゆったりしないのですが、ここは店先から一気にハワイに飛んで行ったのではないかという緑溢れる敷地に雑貨店やレモンの足湯なども備わったリラックスできる空間です。

ここのでは定食や海鮮丼が評判なのですが、メニューの中にラーメンもあります。これと言った特徴の無いあっさりしたラーメンなのですが、窓の外を見るとハワイに行って(行ったことはないですが)ラーメンを食べている錯覚に囚われます。

 


 これでもオープンさが足りない向きには究極のオープン。

 私の場合は折り畳み自転車でやってきて、道中のコンビニで売っている「冷凍麺」を半分解凍する位に自転車で持ち歩いて海辺の雰囲気の良い場所でコンパクトなガスコンロで暖めて食べました。

 冷凍食品といえども、風景・雰囲気をスパイスにして誰にはばかるわけでもなく気分最高です。(ただし後で蚊に刺されていました)

 まだまだ私ごときが語りつくせない奥深さが尾道にはありますので、是非おいでください。

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