日常を切り取る(中編)秋らしくなってきた。カメラ道楽部屋(12)

 健康診断で、「30分くらいの軽く汗をかく運動」をするように毎年奨励されますので、10月の健康診断前に辻褄合わせのように体重を少しでも減らそうと気まぐれで早朝にニシキプリント東広島工場の草むしりをする事がある window tribe です。そのついでで今回も下駄替わりのスクーターのシート下に放り込んだ1000円ほどで入手したオリンパスTG-630を主に使って、工場近辺の風景を切り取ってみました。


営みがあるという事

 ここニシキプリント東広島工場は広島大学の統合移転に合わせて東広島市に進出してきましたが、創業者 宮﨑忠 が障害者雇用に熱心でしたので、バリアフリーの建物になっています。その遺志を発展させ、今は「東広島自立支援センター あゆみ」という就労継続支援A型事業所も併設して多くの仲間が通っております。

 また創業者は宮島の大聖院の信仰にも篤く帰依していましたので、工場創業時に入り口脇に障害者雇用促進を念じて、大聖院ご住職による開眼を経て恕信庵と申します「大日如来像」をお迎えしています。

 他の施設を見学した時に入り口に向かう沿道の垣根が綺麗に手入れされていた事に感銘をうけ、「うちも入り口が雑草ぼうぼうじゃあ、福祉の施設としては夢も希望も持てないなぁ」と思い、せめて植え込みより背の高い雑草は目の敵のように引っこ抜いています。私は草をむしるばかりですが、私以外にも花を生け替えてくれたり、掃き清めたり、手を合わせてくれたりと、進んで初代の遺志を守ってくれる数人の仲間がいることが心強いです。

 朝早く広島の本通商店街のアーケードを通ると、高級時計店では開店前に店舗前のタイル舗装を濡れモップで拭き清めていたりするのを見ることがあります。当番だからやっている的な「やらされている」動きと、お客様を気持ちよく迎よう的な「自主的」な動きは見ていて腰の入り方で自ずと分かります

 そんな視点で街中を観察していますと、高級店気取りでオープンしたレストランのエントランス前を見て、歩道の植え込みの高さを大きく越える雑草が伸びたままだけどなぁと思っていたら、遠からず廃業して業態変更になっている例もありましたので「向こう三軒両隣」も自社の玄関口と思うようにしています。

 自分でやってみて分かることですが、他所に行っても「いつもと風景が変わらない」というのは、人知れずその風景を保つ営みがあることを知る事ができます。


日が昇る

 夏が過ぎ秋を迎えてから、日の出が遅くなってきていますが、朝早く草抜きに来た折に大日如来前を通りますと、私の影が長ーく伸びて、その上、タイルの目地に沿っているので、そそくさとスクーターのシート下からTG-630を取り出してパチリしました。

 普通の人でしたら「あっ、そう」でそのまま通り過ぎる事が多いと思いますが、私にとっては写真道の座右の銘「被写体の前にいる事」となりますので、これはと思ったものは反射的に撮ってしまいます。

 隣の鳥居の写真は伊勢神宮の内宮入り口の宇治橋の写真ですが、ここも年末界隈に行きますと、このように日の出と鳥居を絡めて撮ることができて有難い気分になります。この時は橋の芯で太陽を捉えていませんが、大日如来はタイルの目地に影が合った事が私的には一層と嬉しかったです。

 密教の最高仏「大日如来」、伊勢神宮の祭神「天照大御神」。そのどちらも太陽の化身として崇められて、明治維新以前に長らく続いてきた「神仏習合」の思想の中では同一視されてきた歴史もあるようです。

 このように太陽を信仰の中心として考えた例は多く、平安初期に成立した真言宗においては「大日如来」ですが、奈良時代成立の先輩格、華厳宗においては「毘廬舎那仏(びるしゃなぶつ)」で、有名なのは、総本山の東大寺の大仏さまです。

 海外においてはエジプト神話では「ラー」「ホルス」、ギリシャ神話では「アポロン」「ヘリオス」、インド神話では「スーリヤ」、メキシコ神話では「ケツァルコアトル」など聞いたことのあるような名前が並びます。

 何はともあれカメラのうえで日の出を共にさせて頂いて、私のような煩悩の多い者には勿体ないことです。


ちょっと秋が深まる

 そのような有難い太陽が大活躍されて、暑い暑いとうだっていた夏も過ぎて、ニシキプリント東広島工場の周りでも、秋の様子が徐々に深まっているようです。

 下の写真の黒いごついカメラはオリンパスのTG-4といって、アウトドア用カメラの代名詞ですが、野良着のポケットに入れるのなら1000円ほどで入手したのっぺりしたデザインのTG-630のほうが邪魔になりません。 真夏の象徴「ヒマワリ」は頭を垂れて種を残そうとしています。「オシロイバナ」の黒い種や、これからどんどん赤く色付いていく「フウセンカズラ」も、小学生の頃の徒歩での登下校には立ち止まって見ていた記憶が有りますが、大人になって乗り物で移動するようになると見向きもしないようになりました。

 そんなせわしない日常の中でも、「カメラを持つ」というおまじないは、様々なものに足を止めて覗き込んでいた小学生の頃の童心に引き戻してくれる「タイムマシーン」のような役割も感じられます。


 先の9月の3連休をずたずたにした台風17号は、雨よりはカゼ台風の様相でしたが、通り過ぎた後には栗の実がぼとぼとと落ちていました。

 この赤い花は「ネジバナ」といって蘭の仲間だそうですが、これがポンコツカメラ泣かせで、あまりの細さに後ろの風景にピントが行って、すんなりとは写ってくれません。TG-630のマクロモードにして何とか撮れたのですが、もたもた撮っている間にけっこう蚊の餌食になってしまいました。

 前回でも紹介した彼岸花も随所で一面に開いてきて、隣の工場の入り口脇には白い彼岸花も見られました。

 また、今年の5月に水面と戯れた「カメラ道楽部屋」の7回目の時に紹介した田植え後の田んぼでは立派に稲穂が実っており、近隣では稲刈りの済んだところもあります。

 このように、まるでニシキプリント東広島工場の「田舎自慢」をしているように取られますが、車で10分圏内にJR白市駅と山陽道の高屋インターチェンジ、20分圏内まで広げると、広島空港や新幹線の東広島駅もあります。道路的に東西に貫く山陽道に、南には東広島呉自動車道、北の三次方面にも国道375号は線形もよく走り易いという結構交通至便なところです。

 この工場が出来る前まで私は広島市内の西区に在住していましたが、自宅から職場まで信号機の無い環境に慣れますと、住めば都で広島市内には戻りたいとは思いません。

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