未来先取り、モビリティで大崎上島を巡る。

 アナログ人間と言いながらも、それでいて新しい物が大好きな「 Window tribe 」です。
 大昔にマウンテンバイクが流行る前に乗り回してキャンプ場で行動範囲が広がり、4輪駆動車が一般化する前に2台乗り継ぎ泥濘地で普通に発進できる事に驚き、そのあとハイブリッド車2台に乗り続けて今では一般化しているキーレスエントリーや自動車庫入れなどの電子化・バイワイヤ化を普通に感じて15年になろうとしています。

 前の記事に未来空間のゴミ焼却施設の事を書きましたが、未来の車事情は電気自動車に向かっているようです。何年か前にマツダの研究所の所長さんの講演で「バッテリー技術を制するところが世界のリーダーシップを握る。例えそれが中国であろうと」のようなお話を聞いたように記憶していますが、最近は本当にそうなっちゃいそうな記事も見かけます。

 そこで今回は電気自動車について、一般市民としてちょこっと書いてみます。

「日産ニューモビリティコンセプト」とは

 国内での電気自動車は日産の「リーフ」がリードしていますが、昨年横浜の日産本社のショールームに立ち寄った折に、「GTR」などには目もくれず、横浜市内をレンタルで乗り回せる「チョイモビ」の利用要件である講習を受けておきました。といっても大袈裟なものではなく、車の説明を聞いてから、係りの方を後ろに乗せて周辺を走ると貰えます。

 このチョイモビの使用車が「日産ニューモビリティコンセプト」という超小型電気自動車です。日産バッジが付いていますが実態は「ルノー・トゥイジー」というフランス車です。そのせいでウインカーとワイパーのレバーが国内仕様と逆なので最初に注意を受けるのですが、乗っていても戸惑います。

 ドアにはウィンドウが付いていない吹きさらしで、可愛いけどワイルドな一面もあります。

 そのワイルドさの一端がF1チームのルノースポールが作った「Renault Twizy RS F1」ですが、ルノーのホットモデル、「メガーヌRS」を発進で置いていく韋駄天ぶりでした。

 ともかく乗る人を笑顔にする魅力的なマシンです。

 「日産ニューモビリティコンセプト」は一般には販売されてなくて、自治体で導入実証実験をしている特区でしか走行できません。
 横浜市をはじめ、明日香村、小豆島、門司港など乗れるところが有りますが、広島県でも大崎上島町で乗る事が出来ます。

 

大崎上島で「ニューモビリティコンセプト」に乗ってみた

 新し物好きの私が乗ってないわけが有りませんので、旧聞にはなりますが、その時の様子をお伝えします。
 私が乗ったときは、事前に電話で運行委託されている「さんようバス」さんに6時間レンタルで予約しておきました。
 竹原からフェリーで垂水港について、予約時間に係りの方が乗ってきてスイッチ類やシートベルトなどの説明を受けます。バッテリーは満充電で100kmほど走れるそうです。

 おっかなびっくりでゆるゆると走り出します。少し慣れたところで大崎上島の最高峰の神峰山(かんのみねやま/453m)を目指してミカン畑を縫って登って行きます。途中でミカン輸送用のモノレールが動いていたので見入ります。
 視界が開けた所から見下ろすと広島の軍艦島と称される東邦亜鉛の精錬所が占める契島が見えます。

 山頂手前に駐車場が有り、そこでディティールを見ます。最近の電気自動車の性能向上は目覚しいのですが、性能以前に愛嬌のあるデザインに未来を感じます。
 私の心をわし摑みにしたのが特徴的な万歳したガルウイングドアですが、これ自体はマルチェロ・ガンディーニの代表作の「ランボルギーニ・カウンタック」や「ランチア・スチラトス」に影響されたスーパーカー世代にとってはハイテクというよりノスタルジーのような感じです。これだけでこの車に乗る動機になってしまいます。

 乗車定員はタンデム配置の2名でバイクの二人乗りのような感じですが、後席の狭さは特筆モノです。
 下回りを覗き込んでみますとフランス車ですのでルノーの刻印が打たれていますが、製造はインド製の部品だったりで、自動車業界ではグローバル化で世界最適調達が行われているのが窺えます。

 駐車場から暫く歩いて神峰山の山頂に向かいます。南の愛媛県側は逆光となりますが海に島が浮かび上がった日本画のような光景が開けます。その中に横たわる長大な吊り橋は、しまなみ海道で延長4kmにわたる「来島海峡大橋」ですが、これを語りだしますとかなり長くなりますので、またの機会にダラダラと書きます。

 ちょっとばかり空に近づき良い気分になったのですが、「登る=エネルギーを食う」事になります。下りは一応エンブレ代わりの回生ブレーキである程度バッテリーに電気を戻しますが、麓に下りてもバッテリーメーターは半分になっていますので、燃費ならぬ電費を考えて走ります。電気自動車はガソリン車と違ってここが一番心配なところです。

 麓が近づいた所に猪を捕獲する罠が置かれていたりします。大三島や倉橋島など瀬戸内海の島しょ部ではけっこうイノシシがいるらしく、イノシシラーメンや、肉でジャーキー、革でアクセサリーなど利用法の工夫が模索されているようです。

 大崎上島の西の玄関口の大西港辺りを走りますが、長島大橋というトラス橋の手前にある魚釣り公園「マリンパークおおさき」で一休みすると軽トラに乗ったミカン農家の方に話しかけられます。モビリティーをよく見かけるけれど間近で見た事がないそうで、じっくり観察されます。

 最前部の△マークの所に充電用のコードが格納されているなど、一緒になってつつき回します。お礼に畑で採れたてのミカンを頂きました。このように見ず知らずの方とも仲良くなれてしまいます。

 長島大橋を渡ると大崎発電所があります。この煙突の高さは200mほどあるそうで対岸の安芸津からも見えるランドマークです。

 ここからバッテリー残量を気にしながら島を横断して南岸に向かい、海沿いを走ります。この先の小高い場所には「きのえ温泉 ホテル清風館」があり、ここで食事休憩しますが、このホテルでもモビリティーの貸し出しをしていますので、フロントでお願いして食事中に充電させてもらいます。
 バッテリーは急速充電と言うわけには行きませんので半分くらいの充電となりました。海の見える露天風呂も有るので、ゆったり浸かればもっとチャージできるのですが、人も車も程ほどにエネルギーチャージして先に進みます。

 木江の古い町並みは大正から昭和初期に立てられた木造三階建てなどの商店や旅館などの建物が往時の様子を伝えてくれるのですが、そのなかでも木造五階建ての建物がここのランドマークとなります。一見四階建てに見えるのですが、「四」は縁起が良くないともう一階分奥に乗りかかっています。
 その先に進むとクマさんこと篠原勝之さんの「天の鳥船」というモニュメントも目に入りますがそろそろ車の返却時間が近づいてきますので出発点の垂水港に戻ります。

 まだまだ見所を残した大崎上島ですが、遠くに観光に行くよりも、近くでも知らないところが多い事を教えてくれる瀬戸内の島々です。

モビリティーの予約は
垂水港(さんようバス)/ TEL.0846-65-3531
ホテル清風館/    TEL.0846-62-0555 
大崎上島町観光案内所/TEL.0846-65-3455

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